「子宮筋腫の手術を受けました」「腹式・膣式?」こんな会話を耳にしたことはありませんか。
平成11年5月にハイ・ライフで膣式手術を紹介しましたが、今回はその膣式手術をもう少し詳しく述べて見ましょう。
婦人科医で手術に熱心な先生なら、40歳前後の人で出血が多く凝血が出るというような典型的な子宮筋腫による症状がでる前に筋腫あるいは子宮内膜症を見つけてくれます。無症状のことが多い卵巣のう腫も同様です。
子宮筋腫(子宮内膜症も含む)は、よほど大きくない限り下腹部を切らずに膣の奥から筋腫が取れます。従ってお腹に傷が残りません。それが膣式手術です。太田医院長は膣式手術の名医辻啓(あきら)先生(『最新婦人科手術改訂第2版』平成7年12月1日発行・永井書店)に5年間手術の指導を受け現在の地に開業しました。
その特色は手術開始から終了まですべて吸収性のプレーン腸線(BSEの関係のため生産中止となり、現在は合成吸収糸丸針付バイクリル)を使用し、3回結紮子宮摘出術式により膣断端開放術式を行うことです。
最近辻先生が亡くなったことや、宮田親平『病院えらび辞典』(97年1月第1刷文芸春秋社)や雑誌『安心・97年4月号』などに記事が紹介されたことがきっかけとなり、辻先生の後継者である太田院長に手術の依頼が増え、大きな筋腫を膣式で取っているそうです。同院長にたずねたところ、「800gまでの筋腫を膣式で取ります」とおっしゃっていました。どうしてそんな大きな筋腫が取れるのだろうと皆さんは疑問をもたれると思います。
手のこぶしの倍くらいの筋腫をとる場合、最大径を小さくして膣管を通るようにしなければ不可能なので、メスで筋腫を1立方cmくらいの大きさのサイコロ状に小さく切り刻んで出します。大きければ30個以上になることもあるそうです。手術時間は普通の大きさなら30分、入院日数は術後10日ほどで済みます。
最近行った手術例を挙げてみましょう。
- 44歳・性器出血にて来院。300gの粘膜下筋腫を摘出。手術時間45分。
- 50歳・近医にて子宮筋腫の診断を受け、膣式手術を希望し来院。摘出物670g。手術時間1時間20分。
- 42歳・過多月経にて来院。1040gの巨大筋腫および左卵巣チョコレートのう腫合併。腹式手術。1時間21分。
|