令和2年4月、栃木と会津のそば、それぞれの想い出
新型コロナウィルスによる緊急事態宣言により事実上外出禁止となり、どこにも出かけられません。昭和60年2月1日当地に当院を新規開業し、よくここまでこられたと思います。
若かったから、時代が良かったからなどと言えば簡単ですが、そばを食べに栃木と会津に出かけたことを今回は書いてみます。
~栃木のそば~
昭和61年10月9日 野岩鉄道会津鬼怒川線開通、昭和63年10月19日 国道400号 尾頭トンネル開通、平成2年10月22日 会津線会津高原から会津田島間電化直通開始。
この頃のことが多く思い出されます。
NHKテレビ朝のニュースに『寺の中に駅ができました』と伝えていました。
中三依の駅のことです。生わさびが採れる静かな山里です。
《かじか食堂》という店にて《わさびそば》大盛りを大びんビール1-2本とともに食しました。
辛いわさびの味を覚えています。
今年の大河ドラマに出演している俳優が、太ったかみさんと写った写真がありました。
そして新しくできた《男鹿の湯》に浸かり日帰りしました。
春夏秋冬と通ううち、暑い日ドンドン滝、さらにその奥まで散策しました。
雪の降る大晦日、年越しそばを受け取りに出かけました。
ある民放テレビが《尾頭トンネル》のことを放映していました。
明治41年3月23日 《平塚らいちょうと森田草平の心中未遂事件》があり《煤煙》という作品になっているとありました。上三依から塩原温泉にぬける道です。
鉄道の開通により1日何百人も越えた峠でしたが人が通らなくなったとも伝えていました。
鉄道とは磐越西線のことかと想像しました。
さらに次の回『栃木はそば消費量が全国2位』というナレーションが記憶に残っています。
おそらく出水山万願寺の《いづるそば》のことだったと思います。
栃木インターチェンジを出てだいぶ山に入った所でした。
当時、石灰石を採取した跡に不法投棄がされた問題が大きく報道されていました。
《いづるや》にて食事しました。
メニューに1斤そばとあります。一升桝のそば粉をこね大きなざるに15個ほどのそば玉がもってあります。
大人3人、一心不乱に食して何とか食べ終わります。ビールを飲んでいれば確実に残します。
残れば袋をくれて持ち帰れという具合です。こんな合理的なそばの食べ方はありません。
信州そばと称して、例えば一盛り800円とすれば5盛りくらい食べないといけません。
すると4,000円になります。一升そばが4,000円です。
~会津のそば~
《かじか食堂》のおかみが『東武鉄道は三依には目もくれず、客をみんな会津高原に連れていってしまう』と発言していました。
会津高原下車、さらにバスにて精舎の少し手前の《不動ガーデン》まで行きました。
そばは普通。天然のこごみを持たせてくれました。
また会津味噌について5社ほどのサンプルを示してくれ、1社に決め長い間、入院食として使わせてもらいました。
さらに村議会の関係者として《民宿軽井沢》を紹介してくれました。
八総からたかつえスキー場のアストリアホテルまでの上り道の右側に立派なログハウスがあり、外人のビルダーがその民宿に泊り作業したと聞きました。
60歳から民宿をはじめたという女性は、何といったら良いのでしょう、正直、実直、勤勉、明解な、よく気のつく、一言で表現すれば『非の打ちどころのない』人物でした。
居心地がよく、10年あるいはそれ以上お世話になりました。
特に2階の"やまざくらの間"の窓からの涼風は忘れられません。
夫が亡くなり、中国人の嫁さんが来て味が変わり、行くのを止めました。
チロリアンビレッジの《ペンションロマネスク》に変えました。
帝国ホテルの有名な村上信夫シェフの薫陶を受けたオーナーシェフです。
娘さんが言うには『父のスープは旧くて』と言っていましたが、野菜スープ、特に赤かぶスープは絶品です。
民宿軽井沢の名は有名地の名からとったのではない、昔から当地を軽井沢と言ったということでした。
東日本には軽井沢という地名はよくあり、『おみそれ致しました』という感想を持ちました。
その後、駅近くの《おり田》というそば屋を見つけました。
80歳ほどの主人は、都心の店において和食料理人をしていました。
奥さんは東京新宿の生れ阿佐ヶ谷あたりにおいてジャズ喫茶を経営していたものの、持病のぜんそくがひどくなり開通したばかりの当地に来たといいます。
バブルの絶頂期"会社の保養所"から独立して今の店を作ったのでしょう。
詳しくは知りませんがそう想像しています。
奥さんはスキーのインストラクター。
出てくる食器がいいです。
紅い点が多数描かれている皿があり、はじめ南天かと思いましたが柿だといいます。
この地方では柿を秋に全部摘らずに残しておき、雪の中、鳥たちが食べるということでした。
『会津人のやさしさ』の表れなのかと考えました。
《会津本郷焼》の窯元の製品ということでした。当院の食器としても使わせてもらっています。
そう、この店のそばは極めて品のいいそばです。
ビール中びん1-2本、天ぷらそば、それにもう1品、これで十分です。
会津高原駅の憩の家の店長が、知人の奥さんが子宮筋腫であり紹介してくれました。
当院の商圏は盤越西線の会津若松までと勝手に決めてタウン誌の記事広告を出しました。
誰も来ませんでした。
発行元に聞くと『開業している先生から問合せがあった』といいます。
その先生を尋ねて《徳一》そばを教えてもらいました。
メニューに《高遠そば》がありました。
これで二代将軍 徳川秀忠の子、保科正之が信州高遠から会津に国替えされたことが始まりであると思います。
馬刺しもあります。味はいい。
家族を連れて3度ほど行きました。
大内宿では先の曲ったねぎをはし替りにして食べるといい、それが高遠そばだと思われがちです。それは全くの嘘だと思います。
もう一つ《宮古そば》。
やはりNHKの番組だったと思います。喜多方市山都町。秘そば農家食堂12戸。喜多方の次の駅、山都から相当奥に入ったところにありました。
《水そば》と言われ試してみましたが味は覚えていません。
3回ほど訪れました。駅から途中、湖があり、学校のボート部の合宿所になっているとか。
のどかな所でした。
最後は《白いそばの花》について。
磐越西線の山形側の国道を行くと、どこまでも両側に白いそばの花が続いていました。
見事でした。
最近、高杖原に東京墨田区と埼玉幸手市が保養所の用地としていた土地が計画が凍結され、今はそば畑になっています。
花の咲く頃、多くのカメラマンが撮影に来ます。なぜか皆、私と同じくらいの老人が目立ちます。
高杖原はそばの花が有名になってきています。
もう1ヶ所、《下郷町の猿楽台地》が地元では知られているようですがまだ行ったことはありません。
いつか行ってみたいものです。
《不動ガーデン》《かじか食堂》《髙橋わさび店》の主人たちは皆亡くなってしまいました。
車を運転してくれた、私より2-3歳若い医療機器の社長さんも死亡してしまいました。
30数年の時間の経過を感じずにはいられません。
開業するにあたり、数億円の銀行からの借入金もあと数年にて完済できます。
幕末の《戌辰の役》において、《上野黒門戦争》に破れ、会津を目指した圧倒的な不利な状況の中、会津西街道、会津鬼怒川線をたどった将兵たちは、どんな気持だったのだろうと、よく考えました。
先のことを想えば銀行の借入金の心配、不安はそんなに大きいものではないと自分に言い聞かせてきました。
ドイツ映画《Uボート》も何回も観ましたが、考えの根底は同じものでした。
【参考サイト】
■わさびそば《かじか食堂》
■男鹿の湯
■平塚らいちょうと森田草平の心中未遂事件『煤煙』
■いづるそば《いづるや》
■ペンションロマネスク
■おり田
■会津本郷焼
■高遠そば《徳一》
■宮古そば
■水そば
■下郷町の猿楽台地
■髙橋わさび店
■戌辰の役
■上野黒門戦争
■ドイツ映画《Uボート》
令和2年4月30日(木)記
川間太田産婦人科医院
院長 太田 八千穂

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