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院長ブログ

恩師辻啓先生とわがホームページ

川間太田産婦人科医院 太田八千穂

http://www.ota-clinic.jp/

〈膣式手術〉とヤフーにて検索すると〈三回結紫子宮摘出術について川間太田産婦人科医院〉と一番に出てきます。

8年数ヶ月前、わがホームページを立ち上げました。
確か12月だったと思います。府中や小金井市あたりから多数電話やメールによる問い合わせがあり、筋腫と都立府中病院、武蔵野日赤病院などで言われたが診てもらいたいというものでした。
しかし一人も来院しませんでした。当時ネットというものが全く判らずそんなものだろうというくらいに思いました。次に考えたのが、例えば岩槻と松戸を結んだ線より向こうか、こちらかということでした。


 東急、小田急、京王、中央線沿線から大宮、春日部のりかえ東武野田線(単線)で来院するのです。数年前佐倉市から来院の大きな腹部腫瘤 37°1'ほどの微熱もあり、卵巣腫瘍と診断しましたが当院では手術する気になりませんでした。大病院へ行きなさいと言うと知らないという。紹介してくれと。産婦人科開成会(開成高校卒、出身校は問わず産婦人科医の会)で知り合った東京医科歯科大学教授・久保田俊郎先生に紹介状を書くことになりました。後日同会で教授から「先生のお見立ては正解でした。顆粒膜細胞腫でした」と告げられ驚きました。私が経験した2例目です。


 考えてみれば総武線にそのまま乗っていれば両国の同愛記念病院、錦糸町の都立墨東病院、秋葉原の三井記念病院、お茶の水の順天堂大病院、医科歯科大病院、日大駿河台病院、杏雲堂病院など、飯田橋の東京厚生年金病院、東京逓信病院、 信濃町の慶応義塾大病院と有名病院が存在し、船橋でのりかえ川間まで来るというとは革命的なことではないかと考えました。その後つくばエクスプレスが開業し流山おおたかの森のりかえでさらに便利になりました。

 私はまだ読んでいないのですが、吉村昭「戦艦武蔵」に辻技師が出てきます。辻啓先生の父親であり、呉海軍工廠の優秀な造船技師として働き、米国に行って電気溶接の技術を日本にもたらせと命ぜられ、その技術力によって武蔵、大和が完成したという話と聞きます。当時呉に住み目の前の海軍兵学校に進み途中敗戦、中退、大学受験資格なし、旧制広島高校から東京大学工学部に進学。おそらく造船を希望したと思いますが、将来を考えると大企業のサラリードマンになるしかない、考えた末医者が良いという答えから、東大医学部に入りなおし、昭和31年卒業、産婦人科を選び長野町立浅間病院、富山日赤病院においてひとりで膣式手術に取り組み三回結紫子宮摘出術をあみだしました。東京板橋高島平に開業する前、6ヶ月同愛記念病院に私の兄が東大より派遣され、辻先生に指導され足立の父の病院で兄が執刀し私が助手をしたところ、術者が何をしようとしているかよく判りこれを覚えれば、”めしが食えるな”と考え、弟子入りさせてもらい辻医院に通いました。よくできる婦長が二人いて、2時、3時、4時執刀で3例、5年間教えてもらいました。それから、私なりに膣式手術に取り組んできました。


 つい半月前、新しいホームページを作成し最近5年間の手術別、住所別の表ができました。


 辻先生が亡くなり、十数年たちます。亡くなる前日まで膣式手術をしていた。それも大きなものばかりと聞きます。膣式手術は3K(きつい、汚い、危険)ではないかと思います。なぜ先生が膣式三回結紫子宮摘出術に取り組んだのか、亡くなって数年たち、私が60歳を過ぎたとろ、気付いたことがあります。それは兵学校、敗戦、旧制高校、東大工学部、医学部と進学するうち、くやしい、おもしろくない気持をありったけ膣式手術にぶつけたのではないかということでした。純情な、ストイックななどと表現できるかも知れませんが、私には非常に尊い、偉いなあという感情が残ります。


 子宮脱手術は膣式手術の頂点にある気がします。開成の後輩である慈恵医大柏病院小竹譲先生、窪谷産婦人科窪谷潔先生に辻先生が指導してくれた通り一緒に手術してきました。将来膣式手術は幻の手術になるような気がします。心ある後輩にこの術式を伝えることが私の使命である気がしてなりません。


 野田市医師会にお願いがあります。貧血の強い大小にかかわらず子宮筋腫、腺筋症さらに子宮脱の症例がありましたら、御紹介いただければ大変ありがたいです。

平成23年4月29日記 野田市医師会だより 平成23年5月号より転載

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