「行列ができる名医」に掲載されました
「行列のできる名医」
松沢 実 著
株式会社学習研究社 発行
子宮筋腫
~お腹に傷跡が残らない膣式手術の名手~
子宮筋腫に悩む患者が年々増えています。30歳代以上の女性のうち、4~5人に1人は子宮筋腫があるといわれているくらいです。
子宮筋腫の治療法には手術と薬物療法の2つがあります。薬物療法は飲み薬や注射などで女性ホルモンの分泌を抑えて筋腫を小さくする治療法ですが、薬の使用をやめるとまた再発します。現在、子宮筋腫を根治させるには、手術で筋腫を切除する方法しかありません。
手術にはお腹を切り開いて筋腫を切除する腹式と、膣のほうからアプローチする膣式の2通りの方法があります。日本で広範に行われているのは腹式手術ですが、千葉県野田市の川間太田産婦人科の太田八千穂院長は最新の膣式手術の名医として知られています。
膣式手術はお腹に1つの傷も残さないうえに、患者の肉体的負担も軽いのが大きな特徴です。手術のやり方が難しく、日本で膣式手術を行える医師はそれほど多くありませんが、太田先生はその中で数多くの膣式手術をこなしてきたエキスパートともいえる存在なのです。
◆欧米では広範に普及している膣式子宮摘出術
子宮は縦8~9センチの袋状の臓器です。主に筋肉で出来ており、この子宮の筋肉から発生する良性の腫瘍が子宮筋腫です。
子宮筋腫は放っておいても日常生活に支障があらわれないこともありますが、たいがいは大きくなるにつれ過月経や不正出血から貧血・動悸・息切れなどを起こします。ひどくなると下腹部や腰が痛んだり、頻尿や便秘などに悩ませるようになります。
「子宮筋腫のほとんどは子宮体部にでき、筋腫の発育する方向によって大きく3種類に分けられます。1つは子宮の表面にでき、外側方向へコブ状に張り出す子宮漿膜下筋腫。もう1つは子宮の筋層内で大きくなる子宮筋層内筋腫。あと1つは子宮の内側方向に張り出す子宮粘膜下筋腫です。」(太田院長)
いずれも徐々に大きくなり、直径7~8センチ大の大きさになると骨盤の前方方向にしこりの存在が確かめられるようになります。ときには直径9~10センチ大の新生児の頭の大きさや、さらに直径12~13センチ大の子どもの大きさに成長することもあります。また、筋腫が1個だけの場合もあるし、数個や数十個にのぼることも稀ではありません。
子宮筋腫の手術は筋腫のみを取り出す筋腫核手術と、子宮をそっくり取り出す子宮全摘出手術があります。
「筋腫のみを摘出する筋腫核手術は、妊娠を希望する若い患者さんに行います。しかし、目に見えない小さな筋腫核を取りきれないことから将来再発し、再び手術を受けなければならないケースが多いと言えます。あくまでも妊娠の可能性を残すためのもので、治療としては不完全な手術と言えます。」(太田院長)
子宮をそっくり摘出する子宮摘出術は、2度と再発しない完全な根治手術です。妊娠・出産を終えた30代後半から40代前半にもっとも子宮筋腫の患者さんが多いため、子宮そのものを全て摘出してしまうのです。
「子宮は女性ホルモンの影響を受け胎児を成長させる臓器ですが、女性ホルモンの出どころではありません。子どもを生み終えたら摘出してもホルモン分泌や性生活に支障をきたすこともないので、子宮筋腫の治療は全摘出手術が主流となっているのです。」(太田院長)
現在、日本ではお腹を切る腹式手術がもっともポピュラーに行われていますが、アメリカやヨーロッパではかなり前から膣式手術が一般的です。欧米の女性は腹壁の脂肪層が厚いため腹式を行いにくい反面、膣が広いため膣式を行いやすいからです。
「一方、日本の女性は膣が狭くて膣式を行いにくいが、腹式の脂肪層が薄いため腹式を行いやすいのです。」(太田院長)
日本の女性の場合、膣式より腹式のほうが技術的にたやすいので、どうしてもお腹を切り開いてしまいがちです。しかし、患者さんにとっては、手術後の経過がより良好で、美容的にもすぐれている膣式のほうが良いに決まっています。太田先生は患者さんの立場に立って、長年、膣式手術に工夫を凝らし、洗練された手術法を確立してきたのです。
◆大きな筋腫も分割法で摘出
太田先生が行う膣式手術は「三回結紮子宮摘出術」といいます。東京の故・辻啓医師が開発した術式で、子宮を支える靭帯や子宮動脈、卵巣、卵管などを3回にわたって結紮切断することから三回結紮子宮摘出術と呼ばれています。
手術は通常、腰椎麻酔を行い、患部周辺に生理食塩水を注入することから始めます。
「まず最初の第1回の結紮切断では、膀胱から注意深く子宮頸部を引き剥がし、膀胱子宮靭帯と仙骨子宮靭帯、基靭帯の下端を糸で縛ってから切断します。」(太田院長)
第2回の結紮切断では、基靭帯と子宮動脈を糸で縛り切断します。すると子宮は下方へ垂れ下がり、一対の円靭帯や卵管などにぶら下がった状態となります。子宮は円靭帯などを軸にグルグルと回転させることが出来るようになるため、子宮底部を膣のほうへひっくり返して膣外へ引き出します。
「第3回の結紮切断では、膣外へ引き出された子宮とそれとつながっている円靭帯・卵管を縛り切断します。こうした3回の結紮切断によって、子宮は完全に摘出されてしまうのです。」(太田院長)
手術は筋腫が特別大きくなければ35分ほどで終了します。
筋腫が大きい場合は三回結紮子宮摘出術を発展させた分割法で手術します。三回結紮子宮摘出術ではこぶし大までの筋腫しか摘出できませんが、分割法では直径12~13センチ、重さ1200gあまりの大きな筋腫も摘出できるのです。
「分割法は第2回目の結紮切断後、子宮を膣内で数個から数十個に細かく切り分け、少しずつ膣外へ引き出します。そして、膣の外に出せる大きさにしたあとで、子宮をすべて膣外に引き出して全摘してしまうのです。」(太田院長)
分割法でも手術時間が1時間を超えることはめったにありません。
◆急増する子宮脱の治療も膣式単純子宮摘出術で
子宮筋腫の発生は卵巣の働きが関係しています。
「子宮筋腫の芽というべき筋腫核が、卵巣から分泌される女性ホルモンの作用で増殖し筋腫になると考えられるのです。性成熟期の35~50歳までの女性に頻発するのは、女性ホルモンの分泌量が増えるからです。」(太田院長)
一方、子宮筋腫のある女性でも、閉経以降は筋腫の発育が抑えられ、年とともに萎縮していくことが確かめられます。そのため閉経間際の女性ならば、先の薬物療法でも再発の可能性が小さいので治癒する可能性も高いといえます。
しかし、強い月経痛や不正出血などの症状がひどい場合は、手術による子宮全摘が最適の治療法です。腹式手術が普及している日本では、お腹に傷跡が残るのを恐れ、症状を悪化させてから手術に踏み切る患者さんが少なくありませんが、膣式手術ではそうした心配がまったく必要ないのです。
川間太田産婦人科の受診者の中には、最近、子宮が膣口からはみ出す子宮脱の患者さんも増えています。子宮脱は子宮を支える骨盤内の筋肉や靭帯が緩むことから起きる症状なのですが、三回結紮子宮摘出術で完治するという評判を聞き、太田先生の診察を受けに来ているのです。
「子宮脱は子宮が膣の中に垂れ下がり、不快になるというだけではありません。ときには頻尿や尿失禁、排尿痛などが起こったり、痛みや歩行困難、腎臓の機能障害があらわれることもあります。」(太田院長)
出産回数の多い女性や、長時間、立ち仕事や下腹部に力の入る仕事に携わっている女性に多く見られます。子宮脱は最近、高齢の女性が増えるのに伴い、急増している病気の1つなのです。
子宮脱の治療法には、脱出した子宮を摘出する膣式単純子宮摘出術と、主に高齢者に行う膣口を閉じる中央膣閉鎖術の2つがあります。しかし、ほとんどに患者さんは、前者の膣式単純子宮摘出術による治療法を選び、長年の悩みを解消しているのです。
残念なことに膣式子宮摘出術に熟練した産婦人科医は、そんなに多くありません。手術の方法が難しくても、患者のクオリティー・オブ・ライフが高い水準で維持される膣式手術の普及を望まずにはいられません。
◆月経痛や不正出血がなくなり、快適な日々が戻った
43歳のYさんが子宮筋腫を診断されたのは38歳のときです。都内の病院で薬物療法を受け、いったんは小さくなったのですが、再び筋腫が大きく成長してきました。
3年後から激しい月経痛と不正出血に悩まされるようになり、手術による治療も考えたといいます。しかし、お腹に傷跡が残るため、どうしても踏ん切りがつきませんでした。そんなときに教えてもらったのが太田先生の膣式手術による治療法です。
「お腹を切らないで子宮を摘出できると聞き、すぐに川間太田産婦人科にうかがいました。」(Yさん)
太田先生が診察したところ、Yさんの子宮は直径9センチ大の大きさでした。分割法で摘出可能な大きさなので、翌週、入院し30分くらいで子宮を全摘出したのです。
Yさんは手術の翌日にはベットから起き上がり、歩くこともできました。10日ほどで退院し、現在は不正出血や月経痛などの不快症状が一切なくなり、週に1回はテニスを楽しむ充実した日々を送っています。

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